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2007年5月 1日 (火)

野菜のおいしさって?

Report 昨年度、農水省がはじめた「野菜ブランド化推進調査事業」という、ものものしいプロジェクト。その一つに、野菜のおいしさの指標づくりをめざした、野菜のおいしさ調査研究事業「やさいのおいしさ検討委員会」という活動があり、その末席にいたクサマは、委員という名の雑用係。
指標づくりへの道はまだ長いと思いますが、1年目の報告書ができあがりました。

座長は、東京農業大学の山口静子先生です。その報告書の冒頭に、山口先生がお書きになった結果の概要があります。とても興味深い、というか、熱烈拍手したくなるのがこの部分。

---野菜の消費者は常にその野菜を好きな人とあまり好きでない人、鑑別力のある人とない人から構成されており、それぞれが対立した価値観を持つ集団で成り立っているという基本構造が明らかにされた。その構造を分けて考えなければ、優れた品質は切り落とされ、どちらつかずの中途半端なものしか生き残れないこと、野菜が好きでない人の嗜好のみに合わせれば、野菜は限りなくその特徴や個性を失う方向に流れること、鑑別の基盤となる着眼点を明確化しなければ、品質はとめどなく低きに流れる構造になっているということである。
 また、野菜の嗜好形成には苦味や独特の香りなど生得的には好まれない抑制因子を学習や慣れによって克服する必要があるが、それをショートパスして野菜嫌いの人の嗜好を高めるために、甘みの増強、抑制因子の減弱などの方法を一方的にすすめることは、野菜好きな人を野菜離れさせるばかりか、野菜の品質の奥行きを失い、嗜好の発達を幼児段階に止まらせることになることも示唆された。とくに甘みの増強に関しては、すべての人が甘ければよいとするわけではなく、必ずしも野菜嫌いな人の要望に合致しているとは限らないことも示唆された。成人になってもにんじんが好きでない人はむしろその甘味も好んでいないということも認識すべきである。また、そのために、野菜の本来の微妙なほろ苦さやうま味などの味の深みが閑却され、和食文化の根底をささえてきた繊細な味覚そのものの崩壊に繋がることも示唆された---

それにしても、お役所のこういう事業って単年度ごとなので、レポートを書いたり、予算を取ったりしている時期は、それにかかり切りで、調査研究はできないわけ。つまり、早春から初夏が旬の野菜は、永遠に調査対象にはなり得ないのかもしれないってことになります。なんだかヘン。

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コメント

感動しました。
「野菜の美味しさって何?」と問われて、軽々しく(もっともらしく)答えていた自分が恥ずかしいです。
わたくしも熱烈拍手!というかオカワリ欲しいです。

投稿: suehirogari | 2007年5月 2日 (水) 14時22分

■suehirogariさん
コメントありがとうございます。
ご賛同をいただき、たいへんうれしく存じます。
もし、ご興味がおありでしたら、
5月23日(水)13時30分~ 駒込の女子栄養大学で
山口静子先生の講演がありますので、お出かけください。
詳しくは、<野菜と文化のフォーラム>ホームページ
下記のコーナーでご案内しています。
http://www.yasaitobunka.or.jp/Frameset-02annai.htm

投稿: クサマヒサコ | 2007年5月 3日 (木) 12時49分

私も大変感動しました。自分の舌も含めて、「野菜のおいしさ」をなんか勘違いしていたような気がします。とても考えさせられます。平日の講演にはいけないのが残念ですが、機会があれば山口先生のお話をぜひ聞いて見たいと思いました。

投稿: らすかる | 2007年5月 9日 (水) 10時50分

■らすかるさん
コメントありがとうございます。
これは<野菜と文化のフォーラム>というNPOが
農水省から受託した事業です。
で、この報告書と講演の内容は、
<野菜と文化のフォーラム>のホームページに
掲載されることになっています。
http://www.yasaitobunka.or.jp/index.html
よかったらご覧ください。

投稿: クサマヒサコ | 2007年5月 9日 (水) 15時36分

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