「みず」という山菜
山菜の旬は、野菜売り場的にみると早春から春にかけて。ですから5月なかば過ぎに山菜というと、と季節外れのような気もします。
でも、ちょっと考えてみると雪の積もっているあいだは山菜採りには行けません。ということは、この前まで店頭に並んでいたのは、野山に生えている山菜ではなく、ハウスのなかで栽培されている山菜。
それって、山菜というのかしら。
たとえば林野庁の定義によると、山菜とは「山野に自生している植物であって、食用に適しているものの総称」だそうです。とすると、ハウスで栽培しているものは「山野に自生」していませんから、出身は山菜でしょうけれど、生粋の山菜ではない。むしろ野菜に近くなっています。
「山野に自生している植物」には、雪が溶けてからでないと出合えません。写真は「みず」。
朝早く家を出て、薮をかき分けたり、滑りやすい坂を登ったりして採った、氏も育ちもホンモノの山菜です。
「みず」は、正式には「ウワバミソウ」といいます。イラクサ科ウワバミソウ属、別名、ミズ、ミズナ、ミズクサ、トロログサ。
「ウワバミ」というのは大蛇のことです。なぜウワバミソウなのか、というと、大蛇が棲んでいるような湿ったところに生育するから、とも、この山菜がおいしくてたくさん食べられるので、大量のモノを飲み込む大蛇にちなんで名づけたともいいます。
みずは、茎、根茎、葉などすべてを食べられますが、生長した葉の香りと味にはクセがあるので、ふつう食べるのは茎だけ。
北海道から九州までのほぼ全国に分布します。雪の多い地方ほど良質といいますから、秋田の「みず」は期待できます。
秋田出身のスタッフに教わった地元の食べ方「みずとろろ」↓
ひげを取ったみずの根っこ(ここが大事だそうです)と茎を、粘りが出てくるまでたたき、みそ、しょうが、にんにくなどを混ぜて、ごはんにかけて食べる、というものです。
まず、葉っぱと茎だけにして、皮をむきました。茎は細いのですが、スーッと薄く気持ちよくむけます。次に細かい小口切りにしてから、包丁のみねで、トントントントン…。粘りが十分にでたところで、みそとおろししょうがを加えて、よく混ぜます。
熱々のごはんにかけると、薄緑色のとろろみたい。とろろ芋よりも、品がよくてスッキリしたあじ。しょうがの香りが効いています。
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