カポナータとラタトゥイユ
なすのことを、英語では”eggplant”、 つまり「たまご(みたいな)植物」と呼ぶのは知られていますが、もう一つ”aubergine”という名もあって、この語源はカタルニア語の”Alberginera”、さらに、アラビア語からペルシャ語を経て、サンスクリット語の”vatinganah”にまでさかのぼるのだそうです。サンスクリット語というのは、古代インドの言葉。なすの原産地はインド東部といわれていますから、名前をたどっていくと原産地に到着するというわけです。
”eggplant”は、いうまでもなくなすのカタチがたまごを連想させるからです。でも、なすにはさまざまなカタチや色があります。たまごを連想させるとは限らない。山形の「民田なす」は丸くて小さいし、九州の「大長なす」は40㎝以上。京都の「賀茂なす」のような大きなものや、巾着の形をした長岡の「巾着なす」などなど、いろんな形がありますし、色も紺色、緑、白、縞模様とさまざまです。
シチリアなすも、エッグとはいえない形のなす。茨城県坂東市の後藤農園でつくっているイタリア種です。カットすると果肉が真っ白で、やはり日本のなすとは違うなぁ。
さて、「シチリアなす」なら、やっぱりシチリア料理でしょう。ということは「カポナータ」よね。カポナータはシチリア料理。プロヴァンス地方の有名な家庭料理「ラタトゥイユ」に似ています。そこでこの際、カポナータとラタトゥイユの違いをハッキリさせたい。
ジェイン・グリグソンというイギリスの料理研究家が、『西洋野菜料理百科』に両方のレシピを書いているので比べてみました。
まず、材料。カポナータは、なすとトマト、それにかなりの量のセロリが必須。「セロリが主材料」という解説もあるほどです。また、ラタトゥイユに欠かせないズッキーニは、カポナータには使いません。
調理方法も、カポナータは、まずたまねぎとトマトでトマトソースをつくり、これに素揚げしたなすとセロリを入れて少し煮る。ちなみに私は、なすのみ素揚げし、セロリはお湯を通すだけにしました。一方ラタトゥイユのほうは、野菜をカットし、アクを抜いて、オリーブオイルで順々に炒めて煮込みます。素揚げと炒めでは、野菜の味のとじこめ方とオリーブオイルの量が違います。
カポナータはトマトソースにシチリア風の味をつけます。料理の世界で、「シチリア風」がつくとケイパーが入るのが特徴。それから、グリーンオリーブのみじん切り、アンチョビ…。酸みが足りなかったら、ワインビネガーも入れる。というように、酸みとたまねぎなどの野菜の甘みがミックスされて、複雑で濃厚な味をつくり出します。
ラタトゥイユは基本的に塩こしょうのみ。だからカポナータに比べてずいぶんあっさり、さっぱりしているのね。
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