真黒なす
[野菜の学校]の受講生に、野口種苗におつとめの方がいます。よく、テーマ野菜の伝統品種を持って来てくれるのですが、これもその一つ。埼玉県の関野幸生さんが無肥料無農薬でつくった「真黒なす」です。
「真黒なす」ははじめてお目にかかります。さっそく『日本の野菜』(青葉高著・八坂書房)をみてみました。
関東地方の好みはいわゆる卵形で、関西に比べると小型の品種が好まれ、代表的な品種は真黒茄である。真黒茄は名前のように鮮やかな紫黒色で、蔕下は白く、紫黒色がいっそう引き立って見える。なお真黒茄はそれほど古いものではないらしい。
なるほど、関東好みの品種ですか。「それほど古いものではない」とすると、「千両」が登場して消えていったのかしら。「千両」はいつ頃開発されたのだろう。と思って、ネットに出ているタキイ種苗の歴史をみてみたのですが、出てませんでした。後でちゃんと調べよう。
なすの資料をみていたら、荒井慶子先生からいただいた『婦人の友』 昭和44年8月号の記事のコピーに、「真黒茄子」が出ていました。昭和44年というと1969年、今から50年前です。その頃は、ふつうに売られているなすだったわけだ。
「漬茄子類」「煮茄子類」「兼用茄子類」に分けられ、それぞれの品種と特徴が記されています。下記、読みにくいコピーを判読しました。
- 「真黒茄子」は、「河田茄子」、「中国産・大長茄子」とともに「漬茄子類」に分類され、その特徴は、「皮が厚く、色が濃く、肉質のしまったもの」。(大長なすって焼きなす用だと思っていました)。
- 「煮茄子類」には「大芹川茄子」と「中唐(?)茄子」があり、その特徴は、「皮が薄く、肉質が厚くてやわらかく、種子の少ないもの。形が短大で円形のもの」。しぎ焼きなどの料理にも適する。
- 「兼用茄子類」に入るのは「東京山茄子」「橘真」「黒光中長」。特徴は「漬」「煮」の中間で、果形は長短中位洋梨形のものが多い。市場向けに栽培されているものはほとんど兼用茄子である。近年は需要の傾向に合わせて、洋梨形よりも長形のものが多く生産されている。
この頃、すでに「兼用茄子」と呼ばれるタイプが増えていたらしい。
思いついて、手持ちでいちばん古い野菜料理の本、『野菜クッキング百科』をみてみました。『栄養と料理』の1973年5月臨時増刊ですから、上記コピーの4年後に出た本です。
これには、「漬け」「煮」「兼用」という分類はありません。「一般的なもの」とそれ以外に分けられ、「一般的なもの」としていまの長卵形タイプ、それ以外は「長なす」「米なす」「水なす」「小なす」が紹介されています。ということは、この頃までに「兼用なす」の中の長卵形タイプが「一般的なもの」として定着したということでしょうか。
兼用なすが一般的なものになりすぎ、市場はそればかりになってしまったので、地方品種や昔の品種が注目される時代になった…と思いたい。
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