万福寺大長
種の袋には「煮物に最適な昔ながらの大長にんじん」。
姿は「ちょっと太めのごぼう」。これも、野口種苗におつとめの[野菜の学校]受講生が持って来てくれた飛び入りです。
万福寺大長は川崎市麻生区の特産品だったそうです。もとは、昭和初期(1920年代後半)に万福寺周辺で作られていた滝野川人参(東京大長人参)ですが、戦後(1945年以降)品種改良され、全国農林産物品評会で5年連続1位というすぐれもの。この周辺で生産したにんじんは種を取る「母本」になっていたといいます。
昭和30年代後半(ということは1960年代前半)、農地は宅地に造成されていき、百合丘団地の出現とともに、作付面積は減っていきました。時代は短いにんじんが消費の中心となり、ほとんど作られなくなったわけです。
ここへ来て万福寺大長を復活させようという動きが始まっています。1999年、地名の付いたにんじんを地元で復活させようと、市民を中心に「万福寺人参友の会」を結成。家庭菜園をしている有志が栽培を始め、昔このにんじんを作っていた農家の中には再び作り始めたところもあります。
「滝野川にんじん」は江戸野菜です。享保年間(1716~1736年)に八代将軍吉宗が全国から集めた野菜のひとつ。北区滝野川付近で栽培されるようになり、滝野川にんじんと呼ばれるようになりました。
江戸から川崎へ行ったタネが、品種改良されたわけだ。やがて農家ではまったく作られなくなった。けれど、タネは野口さんで売っていた。で、いま、それを家庭菜園から復活させた…。なんだかいい話です。
展示用に断面が見えるように切った万福寺大長を、持って帰りました。作ったのは、ほかのいろんなにんじんといっしょに煮てミキサーにかけたスープ。ピュレのようにどろりとさせて、冷凍してあります。
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