日本全国なす自慢(6) 千両 とげなし千両
お話をまとめてみました。
- ナスは日本での栽培の歴史が古い。各地に伝わったナスは、その土地の気候風土に合わせて多様な形で定着し、それぞれにあった加工や調理方法が生み出され、その地方独特の食文化が生まれた。
- 在来種は、色、形、肉質において多様性に富んでおり、その個性に合う加工や調理をするとおいしいが、栽培の難易度、収量や品質などの点から、大量生産、大量供給が求められた高度経済成長の下では適合せず、衰退していった。
- 1961年、1963年にF1長卵形ナスの「千両」(ハウス用)、「千両二号」(露地用)というF1種が開発され、あっという間に全国に広がった。千両ナスは、果形の安定性、果色、肉質、食味、栽培性、収量性に優れた品種。生産者にとっては「多収でお金になる」、流通にとっては「良い品物でよく売れる」、消費者にとっては「調理幅が広く、何にでも使えておいしい」ナス。そこで、50年近く経つ現在でも、生産者、流通、消費者から大きな支持を得ている。
- F1種の特長は、早生、多収で栽培が容易なことと、果色が濃く、果形の安定性と秀品率が高いこと。F1種は、農家の生産性向上と所得増加に寄与し、良質なナスを大量に安定供給して食生活を支えてきた。
- ナスのF1種は、長卵形の千両ナス以外にも、丸ナス、長ナス、大長ナス、水ナスなど、在来種の血を引継いだ多様な品種が開発され全国に普及した。このため地域の食文化の多様性も失われることがなかったと考えられる。
- ナスのF1種の場合、両親は、優良な在来種を元にして改良を重ねて育てあげられたものであり、在来種あってのF1種ともいえる。
- 在来種はいったんは衰退したが、飽食の時代やグルメブームと呼ばれる時期を経て、消費者の嗜好が高級化・多様化し、次第に注目されるようになった。
- 1990年代、地方の時代が叫ばれ、村おこし、道の駅、直売所が盛んになった。在来種に関する情報も豊富になり、マスコミに取り上げられることも多い。インターネット通販や宅配便も、地方野菜・在来種の復活に一役買っている。
- 今後、生産者の高齢化が進むことは明らかであり、育種の面でも作業性の向上や省力化が大きな課題。その取組みの1つが、ナスのとげなし化である。果実のヘタや茎葉のとげをなくすことによって、作業性の向上と傷果の減少を図ることができる。現在、とげなし品種では、「とげなし千両」、「とげなし千両二号」、水ナスの「SL紫水」が育成され、普及に移されている。
- もう1つの取組みは、単為結果性の付与。ハウス栽培でのホルモン処理労力の削減を図ることが狙いで、いくつかの単為結果性品種が育成されているが、栽培性、収量性、品質の点で、改良の余地が残っている。
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