野菜の学校(4) 梨なすと八石(はちこく)なす
「梨なす」と「八石なす」、9月の講師、鈴木圭介長岡野菜ブランド協会会長のお話によると、どちらも泉州水なすがルーツとのこと。「梨なす」は、長岡市中島地区で80年くらい前に栽培が始まったなす、「八石なす」は長岡市小国町で栽培されているなすです。
「梨なす」「八石なす」と「十全なす」という名前との関係がどうもはっきりしなくて、なんだかもやもやしています。
整理してみると、
- 十全なすは泉州水なすの血を引く
- 十全なすは、色がよくない
- 十全なすのなかでも、夏に色落ちしないものを「梨なす」と呼ぶ
- 梨なすは「黒十全」とも呼ばれる
- 梨なすは、80年くらい前に中島地区に持ち込まれた泉州水なすを、篤農家が今日まで引き継いでおり、現在の泉州水なすよりも原形をとどめている
- 八石なすは十全なすのひとつ
- 「黒十全」と呼ぶべきなすの「黒」を省略して「十全」と呼ぶようになり、いま「十全」といえば「黒十全」を指すことが多いが、従来の十全を呼ぶこともある。
いったい「十全なす」って……??と思ったら、鈴木会長からいただいた資料に、こういう記述がありました。
昭和の初め、中蒲原郡十全村(現村松町)の篤農家がカタログでタキイ種苗から「‘水なす’=おそらく‘泉州水なす’」の種子を買って自家栽培をしていた。この十全村から白井村(現白根市)に嫁に来た人が、白井村で栽培してから、十全から持って来たので‘十全なす’と呼ばれるようになった。十全地区を探しても‘十全なす’の栽培はない。
村松町は今は五泉市。とすると、「十全なす」は長岡市中島地区に持ち込まれたという「梨なす」とは別の系統、ならば「梨なす」はなぜ「黒十全」と呼ばれるのか…?
いつのころからか泉州水なす系はすべて「十全」と呼ばれるようになったのかもしれない…?
長岡とその周辺では、泉州水なすの栽培が同時多発的に始まったのか…?
こうしたことは文書に残っていないでしょうから、数々の???は浮かんだまま。まあ、暮らしの中で使われる野菜の名前は系統立てて付けられているわけではないので、追求してもあまり意味はないのかもしれませんけれど。
▼梨なすの浅漬け
長岡の農協婦人たちが作っている浅漬け。保存料は入っていません。[野菜の学校]の前々日朝に「これから漬ける」というお電話をいただきました。前日に宅配便にのせ、当日朝クール便で到着したのですが、暑い最中でしたからちょっと漬かりすぎかもしれません。「水なすの浅漬けは、中がほとんど漬かっていない状態がベスト」と鈴木会長。
▼梨なすの焼きなす
水なすを焼くと、とろりとしてほんとうにおいしい。食感的に、巾着なすの蒸かしなすとは正反対の方向です。鈴木会長によると「長岡の衆は、昔は焼きなすという食べ方を知らなかった」そう。食の習慣って不思議です。
このブログでは、「梨なす」と「十全なす」について、下記の項目でも書いています。
▽日本全国なす自慢(2) 中部
http://vege.way-nifty.com/vegetable/2010/08/post-7b4a.html
※2016年4月7日追記
この記事をご覧になった土田重兵衛さんという方からお電話をいただきました。土田さんは、長岡市中島地区で200年間農業を営む7代目でいらっしゃいます。
この[野菜の学校]記事を書いたときの講師は、鈴木圭介長岡野菜ブランド協会会長(当時)です。土田さんのお電話は、ブランドとして認定する活動のなかで長岡の伝統野菜を正しく伝えることから外れてしまった、というご指摘でした。私の記事は鈴木さんのお話に基づいていますから、正しくないことになります。
土田さんは、「梨なす」について、ご自分のホームページで詳しく書いておられます。下記をご覧ください。
伝統野菜の基礎には正しい歴史が不可欠ですけれど、同じように未来にいのちをつなげていくこともとても大事です。そのためにはどうしたらいいか…。どうか長岡の伝統野菜がいつまでも続きますように、祈っています。
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