八百屋塾(1) 修了式の記念講演
1980年代くらいから、野菜や果物の中に隠されていたさまざまな働きが、科学的根拠を持って、明らかにされてきたこと。この働きを機能と呼ぶこと。食べものには、次の3つの機能があること。
- 生命を維持する働き。栄養的機能。
- 感覚を満足させる、充足させる働き。嗜好機能。
- 身体の調子をよくする働き。病気を予防する、あるいは、病気の予防につながる働き。さらには、健康を増進する働き。生理機能。
この3番目が今回のお話です。品目別の機能性など、とても興味深くうかがいました。なかでもとても印象に残ったエピソードは二つ。
■野草は野菜とは違う
江戸時代、飢饉のときに、人が道ばたで列を成して行き倒れているという記録がたくさん残っている。お腹が減っているのに、どうして道を歩いていたのかと思うかもしれないが、これは、道ばたで雑草を食べて心臓発作を起こしたのではないか、と考えられる。
雑草にはカリウムが多い。えぐみの成分のひとつ。だから、雑草は苦くて渋い。燃やして灰にすると、灰がたくさんできる。野菜は、燃やしても灰があまり残らない。だから多くの野菜は、生でも甘く、食べられる。お腹が減っているときにカリウムが多いものをむしゃむしゃ食べると、心臓がショックを起こす。お腹が減って倒れたのではなく、カリウム過剰摂取で倒れた、というのが、現在の栄養学者たちの推測である。
なるほど。
野菜の原型は野草。いまのF1品種は、人間の都合に合わせて作られていて自然ではない、という話から発展して、極論は、野菜より野草のほうが自然でエライ。みたいな話になることがありますが、それは違う。野菜は、人が自然の力を十二分にいかして作ったもの。自然の力なしにはできない。私は、野菜は野草よりエライ、とは言わないけれど、同じようにエライと思います。
■おとなの食はなかなか変えられない
「健康日本21」という国家プロジェクト。1日350gという野菜の摂取目標を定めて、10年経った。スタート時点よりも、ほとんどの項目について数値が悪化している。健康にいいから野菜を食べるべき、とどんなに言っても増えるどころか減っている。で、食育基本法とか、栄養教諭の導入が声高に叫ばれるようになったが…。
つまり、人の行動習慣、好みを、いい年をした人を相手に、変えようとしても無理。いくら身体に悪い、といろいろ言われてもタバコを吸う。野菜はいいと言われても食べない。わかってはいるけど、変えられない。
そうそう。とくに「1(ワン)サービング」なんて数えちゃあね、何も伝わらないと思う。
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