[野菜の学校](3) とうだちした「三河島菜」
「伝統野菜には物語がある」と江戸東京野菜研究会会長の大竹道茂先生。「三河島菜」の場合は「里帰りした三河島菜」です。詳しくは、大竹先生のブログで。
⇒「里帰りした三河島菜」が順調に生育、鍋物に美味い。
⇒「里帰りした三河島菜」に、仙台からも、東京の料理人からもメールが届く。
⇒「里帰りした三河島菜」の販売戦略を畑で語る。
⇒「里帰りした三河島菜」を訪ねて故郷荒川区の栄養教諭さんがやってきた。
▼三河島菜の株
「三河島菜」は大きな葉っぱになるのですが、今日出ている「三河島菜」はとうが立っていて、「三河島菜」という菜で流通していた状態の葉ではない。大竹先生は、「誤解されるといけないので…」と、「三河島菜」の大きな株ごと展示用に持って来てくださいました。「展示したあとは、試食したらどうでしょう」と行き届いたご配慮。重かったでしょう。持ちにくかったでしょう。ほんとうにありがとうございました。
▼昨年出会った三河島菜
押上の「よしかつ」で開かれた江戸東京野菜普及推進連絡協議会総会に登場した「三河島菜」。ほんとうはこのくらい大きい。
<プロフィール>
- 地中海沿岸、トルコ、イランなどを原産地とする和種アブラナ科から分化したもの。和種アブラナ科にはカブ、白菜などがある。
- 三河島菜は結球白菜が中国から伝わる以前から栽培されていた漬菜で、江戸時代初期に、三河国(愛知県)の百姓が入植して作り始めたと伝えられている。当時冬に食べる菜っ葉類は乏しかったので、小松菜や三河島菜が栽培されるようになった。
- 本来三河島菜という特定の菜はなく、三河島で生産される漬け菜のいくつかの品種の総称とした説が有力。アブラナ科の野菜は交雑して変化しやすいため、三河島菜はいくつかのタイプがあったと推測される。12月以降に収穫され、漬物として販売されていた。
- 「荒川区史」によれば三河島菜という名前は徳川幕府初代の頃に名付けられた。産地は現在の荒川区尾久周辺だが、関東大震災後の都市化で農地が急減。さらに明治期に導入された白菜が漬け菜として主流になった結果、三河島菜は次第に作られなくなった。
- また、軟らかい三河島菜を作るには短期間に大量の窒素分を与える必要があり、このような伝統的栽培法が伝承されなかったことも、白菜に負けた原因ではないかというのは、荒川クリーンエイド・フォーラム代表理事野村圭佑氏の談。
- 昭和の初めには「あの人とあの人は三河島の菜だよ」などと会話で使われた。三河島の菜は「良い菜漬け」になることから、「いい菜漬け」と「いいなずけ(許婚)」とを掛けた洒落である。
- 江戸野菜の三河島菜は参勤交代とともに仙台に伝わり芭蕉菜となった。「蔬菜栽培法」の中に「三河島菜(仙台にては芭蕉菜と称す)、東京都荒川区三河島で作られていた三河島菜が仙台芭蕉菜の起源と思われる」とある。現在では、江戸野菜「里帰りした三河島菜(通称里帰り菜)」として、普及に力が入れられている。
- 葉色はやや淡く黄緑、葉の中肋(ちゅうろく)(葉の中央を走る太い葉脈)が長く、幅が広く、葉の縮みは少ない。
- 白菜のようには結球しないで大株になり、外葉のつけ根の部分が外の方向に張り出し、船の錨 に似た姿なので「いかり菜」とも呼ばれた。
- 大型で草丈が60㎝以上になり、耐寒性はやや強く、草勢が旺盛で栽培しやすい。
<栄養・効能>
- アブラナ科の野菜は、辛み成分(イソチオシアネート)を含むのが特徴。
- 三河島菜の成分値はないが、ビタミンA、C、カリウム、カルシウム、鉄などを含むと推測される。
- 和種アブラナ科のカブの葉の成分値は、エネルギー20kcal、タンパク質2.3g、β‐カロテン2800μg、ビタミンB1 0.08mg、B2 0.16mg、C 8mg含む。
<基本調理法・料理例>
- 漬けもの用の菜。熱湯で湯通ししてからつけるとやわらかく漬かる。
- 漬けた葉でごはんを巻いたり、炒め物、鍋などに。古漬けは煮物にしたり、味噌につけ直す方法もある。間引き菜は、汁の実、浸し物、浅漬けにする。
▼三河島菜について書かれている『江戸の野菜』
これを読んで、三河島菜は幻の菜、とずっと思っていました。
- 葉と茎は茹でて、だし汁に浸す
- 米を炊き、寿司飯を作る
- 寿司飯と茎をのせて巻く
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