八百屋塾 (1) だいこん
- 原産地は、コーカサス、中央アジア、中国など諸説あるが基本的には不明。紀元前2000~4000年のエジプトで、ピラミッド工事の給料として与えられた野菜のひとつという。
- 日本には中国から渡来。『日本書紀』に記載されており、720年より前に入ってきていたと考えられる。
- 学名「Raphanus sativus」の「Rapha」は「よく育つ」、「Sativus」は「栽培されている」という意味。英名「radish(ラディッシュ)」はラテン語の「ラディックス=根」に由来。日本では、古くは「おおね」、大きな根という意味で「大根」という字があてられ、のちに「だいこん」という呼び名になった。
◇品種
- 品種は、守口、桜島、聖護院、三浦、方領(ほうりょう)、大蔵など多様。大きさや形にも多彩なバリエーションがある。
- 現在、生産されるほとんどは「青首」で「宮重(みやしげ)」系。真っ直ぐで、根の上部が1/3ぐらい土の上に出るタイプ。一方、三浦は、一部がふくらんでおり、首を出さないため、抜くのが困難。宮重は抜きやすく、出荷もしやすい。9割9分が宮重系になった理由はそこにあるのではないか。
◇F1について
- 現在の主流は青首のF1品種。その人気は昭和50年代に始まる。
- 消費者には、火が通りやすく、辛味が少なく、大きさがちょうどいいことが評価されたようだ。
- 生産者には、F1は形質の揃いがよく、生育が早いので、栽培の回転がよくなるなどのメリットがある。
- 種苗業者は、F1は、自家採種できないので、品種の権利が確保される。
- F1とは雑種第一代のこと。A親とB親を掛けた子が優秀であれば、それがF1品種になる。F1から採種したものはF2。AとBの形質が3:1、あるいは1:2:1に出現し揃いが悪くなる。
- F1は、自家受粉すると弱いものが出現してきてしまうので、2つの親の間でしか交配できないようにしてよいタネを採る。そこで利用するのが自家不和合性と雄性不稔性という性質。
- 自家不和合性とは自分のめしべに自分の花粉がかかっても種子ができない性質。
- 雄性不稔性とは花粉ができない性質で、タネを採るほうの親に利用する。
- F1品種を採種するには、親の系統をそれぞれ維持しなければならない。親を揃えすぎると弱くなるので、親に対してもまたF1を作る。F1を採るためには、4つの系統が必要になる。
- 三浦半島で青首が主流になったのは、1979年の台風20号がきっかけ。全滅した三浦だいこんの畑に青首を播き直してから約3年で替わってしまった。青首は片手で抜けるし、箱詰めも出荷もラクだった。
◇だいこんの根形の遺伝
- だいこんの品種改良は、根の大きさと形が重要。
- 根の形の遺伝は画像で解析する。「大きさ」は超優性という両親を超える遺伝様式、「形」は部分優性という両親の形質の間になる遺伝様式をとるので、「大きさ」と「形」の改良は別々に考える必要がある。
◇だいこんの特性
- だいこんは、基本的に、秋に種子を播いて冬から春に収穫する栽培が多い。寒さの後に日長が長くなると花が咲くので、その前に収穫する。
- だいこんは、根が肥大したもの。木部と呼ばれる真ん中の部分が発達する。にんじんも根だが回りの組織が肥大し、ビートはそれが層状になる。
- 「す入り」は、老化現象。中まで充分に栄養が行き渡らず、時間が経った状態。収穫をあまり延ばさないこと。
- 根が割れるのは、土が乾湿を繰り返したため。表皮のかたくなったところに水がかかると割れてしまう。
- 中が青や黒くなるのは遺伝的なものが関与し、品種により出やすさに違いがある。解析中。
◇だいこんの機能性
- だいこんの辛み成分は、細胞の中では糖とイオウが結合した形のグルコシノレートという配糖体として存在し、細胞が壊れるとミロシナーゼという酵素が作用して、辛子油と糖とイオウになり、辛みが出てくる。
- イソチオシアネートはアブラナ科全般に含まれる辛味成分だが、作物によって形態が異なる。だいこんの場合、MTBIが主要で抗変異原性を示すといわれている。
- レディサラダ、紅芯だいこんなどにはアントシアニンが含まれている。ポリフェノールの一種。
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