野菜の学校(2) 北海道野菜 たまねぎ
<プロフィール>
- ネギ科ネギ属
- 原産地は中央アジアから地中海沿岸。古代エジプトやメソポタミア文明の頃に栽培が始まったといわれる。
- 日本へは江戸時代にオランダ人が長崎に持ち込んだのが始まりだが、長ねぎが普及していたため、定着しなかった。1871年(明治4年)、欧米から輸入した種子を、札幌官園で試作したことから栽培が始まった。長期間保存ができるたまねぎは、北海道のきびしい自然環境に適した野菜であったため、札幌農学校のウィリアム・P・ブルックス博士が、学校周辺の農家に栽培指導を行い、札幌村(現在の東区)の農家・武井惣蔵氏が栽培及び販売に成功した。札幌村は肥沃で、風が強く乾燥しやすいため、たまねぎ栽培に向いており、以降、たまねぎの作付量が急速に増え、北海道でも有数のたまねぎの産地になった。北海道では春に種をまいて秋に収穫する。
- 日本で栽培されているたまねぎのほとんどは「黄たまねぎ」と呼ばれるもので、辛み、貯蔵性がある。この他、皮が赤い「紫たまねぎ」「赤たまねぎ」は肉そのものは白いため、断面が層になっている。「白たまねぎ」と共に、水分が多くて甘みがあり、辛みや刺激臭が少ないので生食に適している。
- 黄たまねぎの「スーパー北もみじ」などのF1種は、低温貯蔵庫で5月まで貯蔵できる。「トヨヒラ」も貯蔵性にすぐれ、サラダに使えるほど辛みが少ない。「さっぽろ黄」や「そらち黄」などの在来種は、比較的甘味があって柔らかいが、貯蔵は12月までが限度。
[札幌黄]
- ブルックス博士が故郷のアメリカ・マサチューセッツ州から持ち込んだといわれている「イエロー・グローブ・ダンバース」という品種を改良し、「札幌黄」として北海道中に広まった。第二次世界大戦前にはロシアやフィリピンへ輸出するほどの生産量があった。
- 最盛期である1970年代後半までは、札幌で生産されるたまねぎのほとんどは「札幌黄」だったが、病気に弱いことに加え、遺伝子に多様性があるために形がふぞろいのものが多く、日持ちがしないことなどの作付の難しさから、生産量が減り、「幻のたまねぎ」ともいわれている。現在、札幌市のたまねぎ全体(約293ha)の約3%の面積(約10ha)しか栽培されていない(札幌市経済局農政課調べ/2010年)
- 肉厚で、熱を加えると甘味と柔らかさが増すのが特徴。一般的な北海道産の他品種(F1品種)は、糖度が9~10度であるのに対し、「さっぽろ黄」は13度で、りんごの甘さと同等。また、ビフィズス菌の働きを助け、整腸効果をもたらすフラクトオリゴ糖も多く含まれている。
- 2007年、「食の世界遺産」といわれる、スローフード協会国際本部(イタリア)の「味の箱舟」に認定された。
<栄養・効能>
- エネルギー37kcal、炭水化物8.8g、ビタミンB1 0.03mg/100g。
- たまねぎの刺激臭は硫化アリル。交感神経を刺激して体温を上昇させ、風邪の予防、脂肪の燃焼の他、殺菌効果もある。
- 硫化アリルの一種のプロピルメチルジスルフィドは、血液の流れをよくし、コレステロールの代謝促進、血栓予防になどに有効であるといわれる。
- <基本調理法・料理例>
- 炒める、煮る、焼く、ゆでる、生食など。
- たまねぎを炒めると甘く感じるのは、水分とともに辛み成分が揮発したり、分解されるため、甘み成分を感じやすくなるから。生のたまねぎを食べても甘く感じないのは、辛み成分を強く感じてしまうため。
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