野菜の学校(4) 北海道野菜 八列とうもろこし
●とうもろこし
<プロフィール>
- イネ科トウモロコシ属の一年草。
- 雄花と雌花が別々にあるが、実際に花は咲かないので、雄小穂(しょうすい)と雌小穂とも呼ばれる。雄花と雌花がひとつの株になる。ふさふさとしたススキの穂のような部分が雄蕊(おしべ)、とうもろこしの実についている「ひげ」が雌蕊(めしべ)で、花柱とも呼ばれている。風などによる他花受粉が主。
- とうもろこしは小麦、米と並ぶ世界三大穀物の一つ。アメリカではコーン(corn)またはメイズ(maize)と呼ぶ。起源ははっきりしていないが、メキシコ、ボリビアなどのアメリカ大陸であろうといわれる。とうもろこしは、マヤ、アスティカ、インカ文明と深くかかわっている食べ物。
- 生育期間が短く、高緯度や高地でも夏の高温を利用して作れるため、世界中で栽培されている。
- 日本へは1579年ポルトガル人によって伝えられたといわれ、当初は飼料用の実の硬いフリント種だった。栽培が盛んになるのは、明治時代(1868年~)に入ってから。それまでになかったスイートコーン、デントコーンなどの新品種をアメリカから輸入し、北海道で栽培し始め、次第に南下して本州でも栽培されるようになった。
- 食料、油、デンプンだけでなく、畜産業の飼料、工業用原料のほか、最近ではバイオエタノールなどに利用されている。
[八列とうもろこし]
- 1890年頃、札幌農学校教師のアーサー・A・ブリガムが米国から導入した「ロングフェロー」や、「札幌八行」を中心にした硬粒の品種群で、「八列」というのは、実が8列に並んでいるから。ロングフェローは、アメリカ大陸の先住民族が選抜して栽培してきたとうもろこしの系統を受け継ぐ貴重な在来種として、アメリカの農家でも保護活動が進められている。
- 甘味が少ないので、醤油をつけて焼き、独特の香ばしい香りを楽しみながら食べる。「札幌・大通り公園のトウキビ売り」という秋の風物詩を育てた品種。また、開拓時代には、粉を粥にして冬場をしのいだ。
- 収穫してから2日で硬くなってしまうため、直売所でなければ生食用として流通できない。
- 北海道のとうもろこしは、昭和(1926年~)に入ってからゴールデンクロスバンタム、ハニーバンタムなどのF1品種にとって代わられ、現在、在来種は絶滅の危機に瀕している。この「ロングフェロー」と「札幌八行」は、農家が自家採取で守り続けている在来種のとうもろこしとして貴重な存在。
- 2005年「味の箱舟」に認定。当初、いざ申請しようにも栽培農家が一軒も見つからず、とあるドライブインで、三部氏が偶然目にした焼きとうもろこしがまさに八列!そこから農家と連携して登録にこぎつけたのだそうだ。
<栄養・効能>
- エネルギー92kcal、たんぱく質3.6g、脂質1.7g、炭水化物16.8g、ビタミンB10.15mg、B20.10mg、食物繊維3.0g/100g (スイートコーン:食品成分表)
- 脂質の約85%は胚芽に存在し、コーン油の原料となる。コーン油はリノール酸を約50%含む。
- ナイアシンが少ないため、とうもろこしを主食にしている地域ではペラグラ(光線過敏症から消化器に炎症、やがて脳症になる病気)にかかりやすい。
- <基本調理法・料理例>
- ゆでる、焼くなどの他、品種によってポップコーン、コーンミール、シリアルなどに加工される。
- 八列とうもろこしは焼いて食べるほか、乾燥させて使う。
●ちなみに、トウモロコシの種類と変遷
- フリント種:明治初期(1860年代後半)から1940年代後半まで増加し、最盛期には道内全域で24,000haの作付があった。粒列が8列のロングフェロー、札幌八行が主流。1950年代後半以降ゴールデン・クロス・バンタムが席巻。
- スイート種:フリント種の突然変異。エバーグリーン(デント種由来)/ゴールデンバンタム、ブラックアメリカン(フリント種由来)
- 馬歯種(デント)/爆裂種(ポップ)
- スーパースイート種:1970年代後半から移行した現在の主流
乾燥させた八列とうもろこしをひいて粉にしたもの。コーングリッツとコーンフラワーは胚乳部の処理など精製方法が違うが、わかりやすいのは粒の大きさ。粗いのがコーングリッツ、細かいのがコーンフラワー。
コーンフラワーとコーングリッツ、ベーキングパウダー、砂糖をよく混ぜ、塩、卵、サラダオイル、牛乳を加え、混ぜて焼きます。上にのせたのは寒地型さつまいも。
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