野菜の学校(2) 安家(あっか)地大根
◆安家(あっか)地だいこん (じでぇこん・紅だいこん)
- 安家地だいこんは 1,000m級の険しい山々に囲まれた山峡の村である 岩泉町安家地区で、先祖代々伝えられてきた野菜。安家という地名は、アイヌ語で「清らかな水の流れるところ」を意味する{ワッカ}という言葉に由来するらしい。冬の寒さが厳しく、氷点下10℃下という日も珍しくない地域である。
- 安家地だいこんは水分が少なく繊維質に富んでいるため、肉質が硬く、貯蔵性が高い。 鮮やかな紅色や桃色、あるいは紅白2色で、 辛みが強く、同時にほのかな甘みがあるのが特徴。青首だいこんに比べてビタミンCは1.5~2.0倍ある(岩手県農業研究センター調べ)。
- スローフード協会の「味の箱舟」に認定されている。
◇安家地だいこんの食べ方
- 真冬に、一度ゆでた地だいこんを川水につけてアクを抜き、寒風にさらして凍結乾燥によって干して保存。これをもどして煮物や汁物に使う。葉も寒風にさらして干し、細かく刻んでゆでて丸め、凍結乾燥、保存する。冬場のビタミン源として干し葉汁の材料になる。
- もみじおろしにして蕎麦や豆腐田楽、名産の短角牛の薬味にしたり、加熱すると甘みがあるので、大根ステーキや天ぷらなどにもよい。
<プロフィール>
- アブラナ科ダイコン属
- 地中海沿岸から中央アジアが原産といわれる。日本へは8世紀ごろ中国から伝来し、「古事記」にも記述がある。日本各地の風土に適した地方品種が多くある。
- だいこんはすずしろ、大根(オオネ)の別称もあり、春の七草のひとつ。室町時代に入り「だいこん」と音読されるようになった。
- 江戸時代から広く栽培さるようになり、飢餓対策として作付けが奨励された。漬け物、切り干しだいこんなどの加工品、保存食として重宝されてきた。
- 現在では、「青首だいこん」「白首だいこん」が主に流通しているが、これら以外にも皮や芯が赤いもの、紫色のだいこん、辛みだいこん、細長いもの、大きいもの、小さいもの、葉を食べるものなど種類は豊富。
<栄養・機能性>
- 根は水分94.6%、エネルギーは18kcal、炭水化物4.1g(糖質2.7g・食物繊維1.4g)、糖質の大部分がブドウ糖、ビタミンCが12mg/100g含まれている。
- 葉は根より栄養分が多い。水分が90.6%、エネルギーは25kcal、カルシウム、鉄、カロテン、ビタミンB群、Cを多く含む。特にカルシウムは260mg/100gと多く含まれている。
- だいこんはでんぷんの分解酵素ジアスターゼ、たんぱく質分解酵素のプロテアーゼ、脂肪分解酵素のリパーゼを含む。酵素は加熱により活性を失うので、生食するのが効果的。
- だいこんの辛み成分はアリルイソチオシアネート(芥子油)によるものだが、この形でだいこんに存在しているわけではない。別々に存在しているイソチオシアネートの前駆物質(グルコシノレート)と、ミロシナーゼという酵素が、だいこんの細胞が壊れて混ざり合うことで、化学反応をおこしてイソシオチアネートができる。おろして組織を破壊すると辛みが強く出る。イソチオシアネートは抗がん作用、殺菌作用、血小板凝集抑制、食欲増進などに効果がある。
- 辛み成分は根の先端部分ほど含有量が多く、葉に近い部位の約10倍にもなる。また若いだいこんに多く、成長するにしたがって減少する。そのため、辛いだいこんおろしには夏だいこんがより適している。この辛み成分は揮発性が強く、水溶液中では消失する。おろしてから時間がたったり、加熱したりすると辛みが少なくなり、ビタミンCも破壊されて少なくなる。また、酢を加えると辛みはやわらぐ。
- だいこんの皮にはビタミンCや毛細血管を強くするビタミンPが多く含まれる。千六本に切り、きんぴら風にピリ辛炒めにするとおいしくむだなく食べられる。
- 紅だいこんの色素アントシアンは、着色料(着色料赤ダイコン・赤ダイコン色素・野菜色素)として酒、ソフトドリンク、清涼飲料水、ジャム、漬物などに使用される。pHによって赤橙~暗紫色に着色できる。
エネルギー | 炭水化物 | カルシウム | 鉄 | |
kcal | g | mg | mg | |
だいこん(葉) | 25 | 5.3 | 260 | 3.1 |
だいこん(根)皮つき 生 | 18 | 4.1 | 24 | 0.2 |
だいこん(根)皮むき 生 | 18 | 4.1 | 23 | 0.2 |
切り干しだいこん | 279 | 67.5 | 540 | 9.7 |
βカロテン当量 | ビタミンB1 | ビタミンC | 食物繊維 | |
㎍ | mg | mg | g | |
だいこん(葉) | 3900 | 0.09 | 53 | 4 |
だいこん(根)皮つき 生 | 0 | 0.02 | 12 | 1.4 |
だいこん(根)皮むき 生 | 0 | 0.02 | 11 | 1.3 |
切り干しだいこん | 0 | 0.33 | 3 | 20.7 |
<基本調理法・料理例>
- だいこんは部位によって糖質や辛み成分などの含量が違うので、使い分けるとよい。葉に近い部位は甘みがあり、生食用。中心部はふろふきなど加熱用に、根に近いほうはやや辛み、苦味があるのでみそ汁の実や漬け物などが向いている。
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