野菜の学校(3) 大分の原木しいたけ
<プロフィール>
- ハラタケ目キシメジ科
- しいたけは、「しいたけ品質表示基準」で「しいたけ菌の子実体であって全形のもの、柄を除去したもの又は柄を除去し、もしくは除去しないでかさを薄切りにしたものをいう。」と定義されている。また、しいたけは「名称」「原産地」の他に、原木栽培されたものには「原木」、菌床栽培されたものには「菌床」、混合した場合は、含まれる重量の多い順に「原木・菌床」「菌床・原木」と表示しなければならない、と定められている。
- 名前の由来はシイの木の枯れ木に生えることからだが、クヌギ、ナラなどの倒木や切り株にも自生する。全国の森林に自生するが、現在では栽培が進み、シイ、クヌギなどの原木に菌種を植え、ほだ木として人工栽培されている。
- 人工栽培の始まりには諸説あるが、17世紀頃、豊後の国(大分県津久見市)千恕の浦の炭焼き、源兵衛が、切り捨てたナラの朽木に多数のしいたけが発生したのを発見したが始まりで、鉈目を原木に入れることや、ナラ、クヌギが栽培に適していることなどもわかったとされる。当時の方法は、ただ鉈目を入れたほだ木を木陰に並べ、風が自然に運ぶ胞子の付着を待つという、半人工的栽培であったという。
- 1892年に菌糸や胞子を培養して、直接ほだ木に吹き付ける方法が開発されてから生産が安定し、産出量も飛躍的に伸びた。
- 1935年頃から、品種改良が行われると同時に、菌の純粋培養の研究が進んだ。1942年、森喜作氏によって、培養した菌をほだ木に打込む「純粋培養種菌駒法」という接種方法が考案され、現在のしいたけ栽培の元となり、安定したしいたけ作りが可能になった。
- ほだ木に種駒を打ち込んで栽培する方法を「原木栽培」、おがくずにふすま、ぬか類、水等を混合してブロック状、円筒状等に固めた培地に種菌を植え付ける方法を「菌床栽培」という。
- しいたけは、採れる季節によって「春子」、「藤子(夏子)」、「秋子」、「寒子(冬子)」と呼ばれる。春子は香りがよく、藤子は虫がつきやすく、秋子は香りは薄いが、虫がつきにくく、干ししいたけにむいている。冬子は1月頃にとれ、寒いときにゆっくり育つため、おいしさが凝縮される。
- かさの開き具合で「冬菇」、「香菇」、「香信」に分けられる。冬菇はかさが七分開きにならないうちに採取したもので、かさに肉が厚く、縁が強く巻きこみ、全体が丸みを帯びている。香信はかさが七分開きになってから採取したもので、肉が薄く、縁の巻き込みは浅く、扁平な形をしている。冬菇は煮物、お吸い物など形や歯ごたえを生かした料理、香信は薄切りなどにし、炒め物やお寿司の具などに使われる。香菇は冬菇と香信の中間品柄で、うま味と香りのある大分の代表品柄。焼く、煮るなどに使われる。冬菇は一晩冷蔵庫で水もどしすると、ふっくらともどる。
- 生のしいたけは全国各地で栽培されているが、干ししいたけは大分県が国内生産の48%を占めている。大分県の気候は、海岸から1,791mの高山まで変化に富んだ地形で、昔からしいたけが自然に発生できる気候であったという。
<栄養・効能>
- 以前はノーカロリー食品とされたが、現在は暫定値ながらもエネルギーのあるローカロリー食品。
- 乾燥しいたけは生に比べてビタミンB群、D、たんぱく質、食物繊維の量などがグンと増える。1個単位で乾燥と生を比較すると、たんぱく質とビタミンDは約2倍、食物繊維は3倍になるという具合。重さは、水でもどすと約4~4.5倍になる。
- 乾燥しいたけは、乾燥過程で酵素と熱の働きにより、香り成分のレンチオニンやうま味成分のグアニル酸が増えるため、強い、香り、うま味がある。
- しいたけのエリタデニンはコレステロールの分解を促進するため、高血圧、高コレステロール血症などの予防にも有効。
- ビタミンDは化学名をカルシフェロール(フェロールは運ぶという意味)といい、カルシウムやリンの吸収を高めたり、骨の形成、維持を促す。また、血液中のカルシウム濃度を一定に保つなどのはたらきがある。ビタミンDは人の皮膚でも作られる。しいたけに含まれるエルゴステロールは紫外線でビタミンDに変化する。このため、しいたけ、干ししいたけを使う前には1時間ほど日光に当てるだけでもビタミンDは増加するといわれる。
- 不溶性食物繊維が多く、胃や腸で水分を含んでふくらみ、蠕動運動を促し、柔らかい便となって便秘の予防や改善に効果があるだけでなく、ダイオキシンを分解するなどの研究がなされている。
- しいたけの成分のレンチナン(β-グルカン)は胃がんなどの抗がん剤としても用いられ、風邪などのウイルスに対する抵抗力をつける作用があるといわれる。
<基本調理法・料理例>
- 生で煮る、焼く、炒める、揚げるなどいろいろな料理に使える。生のまま冷凍することもできる。
- 乾燥しいたけは水でもどし、生と同じように使うが、生よりも香り、うま味が強い。干ししいたけのもどし汁はうま味が多いので、だし汁として使う。
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