野菜の学校(2) 三浦だいこん
1979年は、東日本のだいこんにとって、ある意味でエポックメイキングな、時代を画す年でした。それまで、どんなにアタックされても、生産農家はなじんだ「三浦だいこん」や「練馬だいこん」を手放すことなど思いもよらず、“Yes”と言わなかった青首だいこんのアプローチを、受け入れざるを得ない事態が起きたのです。
それは台風20号。海上において観測史上世界で最も低い中心気圧、870hPaを記録した、メガディザスターというべき超大型台風でした。10月19日午前中に紀伊半島に上陸し、午後にかけて中心が北関東を北東へ進んだため、南関東は台風進路の右側に入って暴風が吹き荒れた結果、三浦半島のだいこんは全滅。急遽、応急処置として植えたのが「耐病総太」というスゴイ名前の青首だいこんです。
これが、名前だけでなく、ほんとうにスゴイ力を持っていました。つくりやすい、これまでのものに比べて短くて抜きやすい、おろしても煮てもそこそこおいしい。特に、農家は抜きやすさに参った、といいます。その後またたく間に、「練馬」も「三浦」も消滅の一途をたどります。現在「三浦」は、だいこん作付面積の1%弱、約6ヘクタールだそうです。
以下は配付資料から
■三浦だいこんについて
- 神奈川県三浦半島の畑は冬から春にかけてだいこんとキャベツで埋め尽くされる。青首だいこん、レディサラダなどもあるが、三浦だいこんは三浦半島を代表する野菜。
- 三浦半島は古くからだいこんの栽培が盛んであったが、19世紀半頃は「鼠だいこん」と呼ばれる短根種だったという。それを「練馬系だいこん」と交雑改良し、さらに耐寒性や収穫のしやすさ、耐病性などの改良が重ねられ、1925年に「三浦だいこん」と命名された。1982年頃には現在栽培されている大きくても味がよく、そろいのよい中葉の「三浦だいこん」が完成された。
- 大きいものでは長さが60cm、重さが5~8㎏にもなる。首の部分が細くて白い、中太り型のだいこん。すべて土の中で育つため(吸込型)、抜き取りは大変な作業になる。
- 1979年、台風20号のために三浦半島のだいこんは全滅。急遽、間に合わせに植え付けた青首だいこんが非常に作りやすく抜きやすかったため、翌年から三浦だいこんの作付けは激減し、青首に取って代わられた。
- 現在、大田市場でせりが行われるのは12月中の一日のみ(昨年は12月
23日26日)。年末の市場の風物詩となっている。 - 肉質がとても緻密で柔らかく、甘みがあって煮くずれしにくいため、煮物やおでん、お正月のなますには欠かせないとなっている。
■だいこんについて
<プロフィール>
- アブラナ科ダイコン属
- 地中海沿岸から中央アジアが原産といわれる。日本へは8世紀ごろ中国から伝来し、「古事記」にも記述がある。日本各地の風土に適した地方品種が多くある。
- だいこんはすずしろ、だいこん(オオネ)の別称もあり、春の七草のひとつ。室町時代に入って「だいこん」と音読されるようになった。
- 江戸時代から広く栽培されるようになり、救荒作物として作付けが奨励された。漬け物、切り干しだいこんなどの加工品、保存食として重宝されてきた。
<栄養・機能性など>
- 根は水分94.6%、エネルギーは18kcal、炭水化物4.1g(糖質2.7g・食物繊維1.4g)、糖質の大部分がブドウ糖、ビタミンCが12mg/100g含まれている。と
- 葉は根より栄養分が多い。水分が90.6%、エネルギーは25kcal、カルシウム、鉄、カロテン、ビタミンB群、Cを多く含む。特にカルシウムは260mg/100gと多く含まれている。
- だいこんはでんぷんの分解酵素ジアスターゼ、たんぱく質分解酵素のプロテアーゼ、脂肪分解酵素のリパーゼを含む。酵素は加熱により活性を失うので、生食するのが効果的。
- だいこんの辛み成分はアリルイソチオシアネート(芥子油)によるものだが、この形でだいこんに存在しているわけではない。別々に存在しているイソチオシアネートの前駆物質(グルコシノレート)と、ミロシナーゼという酵素が、だいこんの細胞が壊れて混ざり合うことで、化学反応をおこしてイソシオチアネートができる。おろして組織を破壊すると、辛みが強く出る。イソチオシアネートは抗がん作用、殺菌作用、血小板凝集抑制、食欲増進などに効果がある。
- だいこんの皮には、ビタミンCや毛細血管を強くするビタミンPが多く含まれる。千六本に切り、きんぴら風にピリ辛炒めにすると、おいしくむだなく食べられる。
- 「当たらない役者」を「だいこん役者」と呼ぶが、これには諸説ある。だいこんは滅多に食当たりしないことに由来するという説、だいこんが白いことから「素人」とかけたという説、また、ヘタな役者ほど白粉を塗りたくるため、「だいこんのように白い」をかけたという説などである。
<基本調理法・料理例>
- だいこんは部位によって糖質や辛み成分などの含量が違うので、使い分けるとよい。葉に近い部位は甘みがあり、生食用。中心部はふろふきなど加熱用に、根に近いほうはやや辛み、苦みがあるので、みそ汁の実や漬け物などが向いている。
- 三浦だいこんは水分が多く、辛みのほかに甘みが強く、辛み、甘み、苦みのバランスがよい。生食として刺し身のつまや、なますにすると、白さが冴える。また、長時間煮ても煮くずれせず、味がしみ込みやすいため、おでんや煮物にも向いている。
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コメント
昨年の三浦大根の競売日は12月26日です。23日は天皇誕生日で休市日でした。
投稿: 森田 | 2015年2月 1日 (日) 17時17分
森田さま
ご指摘、ありがとうございます。訂正します。
投稿: クサマヒサコ | 2015年2月 1日 (日) 17時25分
クサマ様
何時も興味深く全国の伝統野菜の情報を拝見いたしております。昨日は初めてのメールにも拘らず、あいさつも何もない失礼なメールを送ってしまい申し訳ございませんでした。
これからも様々な情報の発信を楽しみにしております。
投稿: 森田 | 2015年2月 2日 (月) 19時20分
森田さま
このブログをご覧いただいているとのこと、ありがとうございます。
おっちょこちょいでスミマセン。[野菜の学校]のちらしも違っていたかも、と確認したらそちらは正しく26日になっていて、ほっとしました。
これからもいろいろ教えてください。
どうぞよろしく!
投稿: クサマヒサコ | 2015年2月 3日 (火) 09時19分