野菜の学校(5) 万福寺鮮紅大長人参
▼以下配付資料から
●万福寺鮮紅大長人参
- 1932年頃から、川崎市麻生区万福寺近辺で滝野川にんじんを栽培。1949年に川崎市農林課を中心に改良が始まり、柔らかく、甘みのある「万福寺鮮紅大長人参」、通称「万福寺人参」が商品登録された。人気も高く、種を採取するために、八ヶ岳山麓の高冷地に仮植えし、翌春定植する工夫や、万福寺採種組合もできていたが、1950年半ばには都市化のための住宅造成に伴って栽培地が減っていき、1970年には組合も解散となった。その後、にんじんは長根から短根にんじんに栽培が移行したが、1999年頃に麻生区の農家、教員、会社員など30人ほどが集まり、「万福寺人参友の会」が発足して、栽培が再開された。
- 東洋系にんじんで、長さが70~90cmほど、柔らかく、味が濃厚で香りも強い。
- 耐寒性があまり強くないため、年明け以降は地上部の成長が止まり、葉が傷みやすい。深さのある畑が必要で、収穫も手間がかかる。収穫は11月末から12月10~25日にかけて行われる。
●にんじん
<プロフィール>
- セリ科ニンジン属。アフガニスタン周辺の原産。
- 16~17世紀に中国から伝来した細長い東洋種と、江戸時代末期にヨーロッパからアメリカ経由で長崎へ渡ってきた太く短い西洋種の2種類がある。
<栄養・機能性>
- β-カロテン当量は9100μg/100gで緑黄色野菜の代表。他にカリウム、ビタミンB群を含む。
- 赤橙色が濃いものほどカロテノイド色素が多い。カロテンの名は英語のcarrotに由来している。特に皮の近くに多く、強い抗酸化作用があるため、がん予防や老化防止に役立つ。
- カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わるため、プロビタミンAという。ビタミンAは光の明暗を感じたり、成長、発育の促進、皮膚や粘膜を正常に保つなどの働きがある。
- β-カロテンは西洋系にんじんの方が多いが、東洋系にんじんはエネルギー、タンパク質、ビタミンB類などが西洋系に比べて多い。
<基本調理法・料理例など>
- ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、油を使って炒めたり、ドレッシングやグラッセなど油と一緒に摂ると吸収がよくなる。吸収率は生で1割、煮ると3割、油で炒めると5~6割といわれる。
- スーパーなどで売られるにんじんのほとんどは、皮がむかれている状態で出荷されている。炒め物などにはよく洗って皮ごと使うか、薄くむいて使うとよい。皮つきのまま煮物にすると、皮が中身とはがれて口に残ったり、時間がたつにつれて皮が黒くなり、見た目が悪くなることがある。
- 芯の部分はかたく、味も落ちる。野菜スティックなどは、芯より周囲のほうがおいしい。
- にんじんとだいこんを使う「紅白なます」や「もみじおろし」などの調理の際、にんじんに含まれるアスコルビン酸オキシターゼ(アスコルビナーゼ)という酵素が、だいこんのビタミンCを破壊するので、両者を生で合せないほうがよいといわれていた。つまり、アスコルビナーゼはビタミンCの効力をなくすということだった。
- しかし、現在の食品成分表のビタミンCの数値の考え方は以下の通り。
「食品中のビタミンCは、L‐アスコルビン酸(還元型)とL‐デヒドロアスコルビン酸(酸化型)として存在する。その効力値については、科学技術庁資源調査会からの問い合わせに対する日本ビタミン学会ビタミンC研究委員会の見解(1976年2月)に基づき、同等とみなされるので、成分値は両者の合計で示した。」とある。 - アスコルビナーゼは還元型ビタミンC「L-アスコルビン酸」を酸化させるのであって、破壊するわけではなく、酸化されたビタミンCも体内に入ると、すぐに還元されてもとの還元型ビタミンCに変換されるため、どちらの型で摂取してもビタミC総量は変わらないということ。
- ただし、酸化されたビタミンCを長時間空気中に放置しておくと、ジケトグロン酸という別の物質になり、この状態では還元型にもどらず、ビタミンC効力もなくなる。たとえば、すりおろして混ぜただけの「もみじおろし」を放置しておくと、ビタミンCの効力は損失する。アスコルビナーゼは、酢などの酸や加熱で働きが止められる。したがって、サラダとして一緒にとったり、酢の物のなますなどとしてとるのであれば、ビタミンCの損失をあまり気にする必要はないと考えられる。
▼御倉さん、寒風の中、畑に行ってくれました。
「細くて長くて、とても収穫がたいへんなの。よほどおいしいとか何かなかったら、消えてしまう」と御倉さん。そうかぁ。やっぱりこういう種類が生き残るのは、むずかしいんだねぇ。
▼万福寺大長人参品評会
毎年コンテストが行われているそうです。姿形はもちろん、味の部門もあり、味では負けないという人もいます。
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