野菜の学校(2) 高岡どっこ
<プロフィール>
- ウリ科キュウリ属
- きゅうりは、ヒマラヤ山脈の南部山麓シッキム付近が起源とされるが、アフリカ起源の説もある。古代エジプトでは、B.C.1750年頃には栽培されていたといわれる。6世紀以前には中国に伝えられ、華南系品種群と華北系品種群がある。
- 日本では、薬物事典である『本草和名』に「胡瓜」「小而多汁」「和名加良宇利」とあり、古くは薬物として利用されていたらしい。野菜としては、江戸時代末期以降に栽培されるようになった。日本できゅうり栽培が広がらなかったのは、きゅりの切り口が京都八坂神社の紋や、徳川の葵の紋に似ているため、禁忌作物にされていたともいわれる。
- きゅうりは漢字で「胡瓜」、中国の西域にあった‘胡’の国から中国に入ってきた瓜に由来する。熟すと黄変するので「黄うり」ともいわれ、現在の「きゅうり」の元になっている。
- 1790年頃から江戸郊外の砂村できゅうりの早出し栽培が始まり、全国各地で地方品種が生産されるようになった。
- きゅうりの果実の表面には多くの突起があり、その先端に棘トゲがある。これを通常「疣<いぼ>」と呼び、色の違いで「白いぼ」、「黒いぼ」などと呼ぶ。現在では白いぼきゅうりの栽培が多い。
【華南系品種と華北系品種】
- 華南系品種は、東南アジアから中国南部で早春に栽培されたもので、わが国に最初に伝わった品種。節の間がつまり、草姿はずんぐり。黒いぼ系の品種が多く、「馬込半白」、「相模半白」、「落合節成」、「
- 淀節成」などが知られる。
- 華北系品種は、節の間が伸びやすく、根の張りが粗く、植え替えすると傷みやすいが、耐暑性が比較的強い。果実全体が緑色なので生食用として見栄えがし、食味がよい品種が多い。白いぼ品種が多く、「金沢節成」、「加賀節成」、「刈羽節成」、「会津葉込」などが知られる。
【どっこ・高岡どっこ】
- 「どっこ」とは太くて短いという意味。富山県高岡市で加賀藩政時代から栽培されていた白いぼ系の太きゅうりをいう。果実の長さは約30cm、太さ約7cm、重さは1kg程度で、果肉が厚く、日持ちがよい。そのため、明治の中期以降、遠洋漁業に出向する船の生鮮食料として船積みされていた。あんかけや詰め物煮などの調理法が主で、冷蔵庫が普及して後も食習慣として定着してきた。
- 「どっこ」は加賀藩の「加賀太きゅうり」が導入されて定着したと考えられているが、自家採種を繰り返すうちにより大型化し、苦味も減るなど、特性は異なってきていた。また、自家採種によって品質にバラつきがあり、暑さにさらされると皮が白く変色し、果肉がやわらかくなるという難点があるなど、生産者の間では問題になっていた。
- 「どっこ」に惚れ込み、選抜・交配によって改良に成功したのが高岡市の石黒栄信氏。「高岡どっこ」は台湾の太きゅうり「青大(あおだい)」との交配で作られた新品種として、2002年に農林水産省に品種登録された。
- 「高岡どっこ」は、暑さに強く、皮が白くならない濃緑色で、果肉が厚く、香り・甘みがあり、苦みが少ない。暑い季節にはその風味のよさから、くずあんかけがよく作られる。漬けもの、酢のものにもよく合い、熱くてよし、冷えてまたよしと、多くの人に好まれた。
- 収穫は5~8月が主体だが、一部は8月下旬~11月にかけても行われた。ただ現在、「どっこ」はすでに試験場以外では生産されておらず、「高岡どっこ」の生産者も2名のみで、主に料理店用になっている。
- 水分が95.4%と多いため、エネルギーは14kcal/100gと低い。(食品成分表)
- カリウムが多く、利尿作用がある。二日酔いや手足のむくみの解消によいといわれる。
- 特有の青臭さはキュウリアルコールが主成分。血が固まるのを防ぐピラジンという成分を含む。
- 苦味の主成分はウリ科の植物に含まれるククルビタシンという物質で、ヘタの部分に多い。ククルビタシンは皮の色が濃いものに多く、白っぽいものには少ない。熱に安定しており、15分加熱しても抜けない。ただ、現在出回っているきゅうりは、ほとんど苦味がないものに品種改良されている。
<基本調理法・料理例>
- 太きゅうりは、煮物、くずあんかけなど、加熱した料理が一般的。
- 浅漬け、酢の物などにも。
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