野菜の学校(2) 桐岡なす
- ナス科ナス属
- 原産地はインド東部。4~5世紀ごろ中国へ、日本へは8世紀ごろに伝わったといわれる。西方へは5世紀にアラビア、13世紀にヨーロッパ、16世紀にアメリカへ伝わった。
- ナスの語源は夏にとれる野菜「夏の実」「中酢実」などが転じて「奈須比(なすび)」となり、室町時代に宮中の女房(女官)ことばから「なす」なったといわれる。
- 江戸時代には静岡県三保のあたりで促成栽培が始まり、初なりのなすは賄賂に使われるほど高価な野菜であったという。
- 在来の地方種が多く、色、形、大きさなどさまざまで、国内のなすは「卵形なす」「長卵形なす」「長なす」「大長なす」「丸なす」「小なす」「赤なす」「青なす」「白なす」などに分けられる。
[桐岡なす]
- 佐賀県多久市桐岡地区で栽培される伝統野菜で、農家の自家消費用として受け継がれてきた。
- 6月下旬から11月初旬頃まで収穫できる大型なす。
- 1928(昭和3)年以前には市場へ出荷されていたという。収量が少なく、大きさや形状が輸送に不向きなため、収益性が少なく、市場性がなかったが、2006(平成18)年度から「キラッと光る佐賀県の特産品づくりチャレンジ事業」において、行政と連携が始まった。現在では20人程度の生産者が約1000株栽培している。
- 一般的な長なすなどに比べ、皮の色は赤紫色で明るく、果肉は鮮緑色。ラグビーボールのようにずんぐりとしていて、大きさ、重さは2~3倍で、重さは400gくらいから大きいものは1kgもある。
- 水分が多く、アクが少ない。きめ細かく肉厚で、種が少ない。火の通りが早く、煮くずれしにくい。味がしみこみやすく、しっかり加熱するとトロリとやわらかくなるのが特徴で、油との相性もよい。
<栄養・効能>
- 水分を93.2%含むため、エネルギーが22kcal/100gと低い。ミネラルではカリウムが多く、ビタミン類は少ない。
- 古くから熱を冷まし、解毒効果があるとされ、体を冷やしたり、高血圧予防、利尿を促すなど民間療法に使われてきた。
- 果肉にクロロゲン酸などのポリフェノール類を含み、切り口が空気に触れると褐変したり、エグ味の原因になる。クロロゲン酸は水にも油にも溶ける性質をもつ。
- クロロゲン酸は100℃以上の高温で焼くと分解したり、新たな化合物が生じるなどの複雑な化学変化を起こして減少するため、焼きなすを強火や高温で焼くとエグ味が少なく、弱火で焼くとエグ味を強く感じる。
- ナスニンは強い抗酸化作用があるため、活性酸素の発生やコレステロールの吸収を抑え、ガン予防に効果があるといわれる。また、アントシアン系の色素のため、眼精疲労の回復にも効果がある。
- なすは油を使って高温で調理すると、色が鮮やかになる。これはアントシアン色素が100℃以下の加熱では変色や退色しやすいが、130℃以上の高温では色素が安定し、きれいな紫色を呈するためである。
<基本調理法・料理例>
- 一般的になすは味が淡白で、組織が粗くてスポンジ状のため、煮汁などの味がしみこみやすいが、煮くずれしやすい。また、部分的に味や油を吸いやすいため、例えばソテーの場合は、油を半分使って半面を焼き、裏返して油を足すなどの工夫をしないと、裏表のできあがりに差がつく。
- 水分を多く含み、生の果肉は水分が組織から離れにくい。加熱して組織がやわらかくなると水分が出てくるので、煮ものの味つけは水っぽくならないように気をつける。
- 油との相性がよく、揚げもの、炒めものによく合う。クロロゲン酸やポリフェノールは油に溶け出すため、エグ味が少なくなり、油のうま味も加わって、味がまろやかに、甘く感じる。
- なすは低温で保存すると、つやがなくなり、茶色のくぼみができて腐ってくる。これを「なすの風邪ひき」という。保存の適温は7~10℃程度。
- 桐岡なすは、焼きなす、天ぷら、グラタン、ホイル焼き、ソテーなどの他、みそ漬け、甘酢漬け、浅漬けなどの漬けもの類、パンナコッタなどの菓子類にも加工されている。
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