野菜の学校(2) 東京長かぶ(品川かぶ)
「東京長かぶ」。江戸東京野菜のリストには、「品川かぶ・滝野川かぶ(東京長かぶ)」と表示されています。一方、青葉高先生の『野菜』(法政大学出版局)に「品川かぶ」はなく、載っているのは「東京長かぶ(滝野川かぶ)」。※下記
■東京長かぶ(滝野川かぶ)関東から新潟、東北地方の山間地帯で栽培される。かぶは白色の長い徳利形で、地上部は淡緑色になることが多い。肉質はややかたく、漬けもの用に適している。葉は幾分開き、基部には欠刻があり、照葉でけがわずかにある。B形種皮で洋種系品種である。相当古くから、来歴は明らかではない。
「品川かぶ」は、文化元年(1802年)、薩摩藩主島津重豪が、農事などについて編纂させた博物誌『成形図説』に掲載されています。そのことを、品川神社の「農業説明板」で知った品川の青果商、大塚好雄さんが「品川かぶ」を起爆剤にした町おこしを考えた。探してみると、小平で栽培されていた「東京長かぶ」が『成形図説』の「品川かぶ」の絵と似ていたので、「品川かぶ」として栽培を始め、広めていったのだそうです。
青葉高先生によると、「東京長かぶ」は「関東から新潟、東北地方の山間地帯で栽培される」というほど広く栽培されたのですから、「品川かぶ」は「東京長かぶ」であるという説は説得力があります。
▼以下は、配付資料から
<プロフィール>
- アブラナ科アブラナ属。「かぶ」という名は形が人の頭(かぶり)に似ているところからつけられた。
- 原産地は中央アジア説とヨーロッパ西南部、海岸地帯説がある。日本へは中国またはシベリアから伝来したと考えられている。
- アジア系とヨーロッパ系の品種に大別され、アジア系は西日本、ヨーロッパ系は東日本に分布、関ケ原付近を境に分かれる。アジア系は、葉は立性で欠刻(切葉)は少なく、根は球形のものが多い。東日本に分布するヨーロッパ系は、葉は開張性で欠刻は深く、耐寒性が強い品種が多い。
- 大きさ、色などの異なる多くの品種があるほか、各地の気候、土壌などの条件に応じた特色のある品種が多種多様に栽培されている。昔から漬けものとして葉も根も利用されてきた。現在一般に流通しているのは、「金町小かぶ」を品種改良したものが多い
<栄養・効能>
- かぶは葉と根で栄養成分が異なる。葉は緑黄色野菜で、抗酸化力の強いビタミンA、C、Eや食物繊維、ミネラルを多く含んでいる。根は淡色野菜で糖質、ビタミンCなどを含み、でんぷんの分解酵素であるジアスターゼを含んでいるため、消化の促進に役立つ。
[品川かぶ(東京長かぶ)]
- 江戸時代、品川宿の周辺で栽培、食べられていた大根のような20㎝ほどの長いかぶ。栽培は途絶えていたが、2007年品川の青果店のご主人大塚さんが、小平の農家で形のそっくりな「東京長かぶ」が栽培されていることを知り、種を譲り受けて栽培が始まった。「品川かぶ」と名づけ、翌年から品川区の小学校などで栽培してもらうなど、品川区をあげて普及につとめている。
- 最近は地元の商店と協力して、ケーキや餃子を商品化したり、2012年からは「品川かぶ品評会」も開かれるようになった。煮もの、汁の具、甘酢漬けなどにむく。
- 「東京長かぶ」は20cm前後の細長い根と、50~60cmの大きな葉をもつ江戸東京野菜。北区滝野川付近で栽培されていたため、「滝野川かぶ」という名もある。肉質は硬く漬けものにむく。
[金町小かぶ]
- 明治末期に金町(現在の東金町)の長谷碌之助氏が、「下千葉中生」という小かぶを、4月に早どりできるように改良。当時は千住市場に出荷され、高級料亭等に高値で取り引きされた。その後金町一帯で広く栽培され、東京から全国に広まったという説と、農商務省の三田育種場で栽培していたフランス産かぶの種を明治10年頃栽培していたのが、地元のかぶと自然交配してできたという説がる。
- 金町小かぶは長期間強い寒さに合わないととう立ちせず、花芽が出にくいため、青物が乏しい春先に霜や寒さで傷んでいない、青々とした葉や真っ白で光沢のあるかぶが喜ばれた。
- 煮崩れしにくく、甘みがあり、舌触りがなめらかなため、漬けもの以外に、汁の具、酢漬けにもむく。
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