野菜の学校(5) 「牧野野菜」復活プロジェクト
高知の事前取材は講師の押岡洋子さんがアレンジしてくださいました。空港に到着したその足で向かった最初の取材先が「村田所長の試験圃場」です。村田所長とは村田隆則高知農業改良普及所所長。「Team Makino」のメンバーの一人です。お話をうかがいながら、ハウスや露地で育っている野菜を見せていただきました。
▼「牧野野菜」のまとめ
- 高知は、植物学者牧野富太郎博士(1862~1957)の出身地。
- 同じ高知出身の竹田功氏(1920~2011)は、牧野博士が設立した「東京植物同好会(現・牧野植物同好会)」に学生時代から参加していた。戦後、竹田氏が高知に帰る際、牧野博士は高知の伝統野菜の標本採取・調査を依頼。高知県立幡多農業高校教諭となった竹田氏は、教え子たちと標本採取・調査を行った。
- 竹田功氏が収集したタネは長男の竹田順一氏が引き継ぎ、生産者、熊澤秀治氏に託した。このタネは「牧野野菜」と命名された。50種類ほどある。
- 熊澤氏を中心に「Team Makino」が誕生。「牧野野菜」の特性や栽培方法はまだよくわかっていない。その上残されたタネの数もわずか。そこで、分担して選抜・採種が行われている。
▼村田所長のハウスで栽培されていた「牧野野菜」
「牧野野菜」のリストには「青首大」という説明があります。確かに茂った葉のかげから、緑色の首がのぞいている。
「山内家」とは土佐藩の藩主、山内家のことです。「内助の功」で有名な妻をもつ、山内一豊は尾張生まれ。豊臣傘下の小大名でしたが、関ヶ原の戦いのとき徳川方について勝利をもたらし、その軍功によって土佐国9万8千石が与えられました。このとき尾張から土佐へ持ち込んだ野菜たちは、「牧野野菜」のうちの「山内家伝来」と名づけられています
このだいこんは、愛知の伝統野菜「方領だいこん」とルーツが同じとされており、「こちらでの生産が安定したら、愛知県のものと比較してみたい」と村田さん。さて、愛知の「方領だいこん」はどうなっているでしょう。一昨年の冬調べたところ、JAが採ったタネを農家に配付していますが、栽培状況などは把握していないと聞きました。
「大道(おおどう)高菜」または「大道昔高菜」と呼ばれる、土佐の伝統野菜。「大道」は四万十町十和(とおわ)地区にある地名。高知県(たぶん四国)にある伝統作物のたかなはこれだけ、とのこと。
「もち菜」は愛知にもありますね。「正月菜」とも呼ばれている菜…。と言いましたら、「愛知のもち菜とルーツが同じ」と村田さん。山内家が土佐に持ち込んだとされており、こちらも愛知県のものと比較してみたいとのこと。煮物や漬物にするととてもおいしい野菜だそうです。それにしても、愛知の「もち菜」とは姿がずいぶん違います。
葉に切れ込みがないので「南越(みなこし)かぶ」、と村田さん。四国の山間部には、焼畑で栽培された赤かぶが各地に残っているそうです。「南越」は、いの町(旧吾北村)にある地名、と教えていただきました。
竹田氏は土佐清水市で採取したと考えられますが、現在は栽培されていません。一般的には「ムクナ豆」と呼ばれる豆で、食用としてより、機能性成分をうたう健康食品として扱われており、健康市場への展開を期待している、とおっしゃっていました。
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