野菜の学校(9) 弘岡かぶ
「弘岡かぶ」は、ハウスと露地で栽培されていました。これは露地のほう。真っ白な頭が並んでいます。
「どれでもとっていいですよ」と言われて、ぬいた。というほど力はいらなかったようです。葉っぱをもって上に引っ張るとスッとぬける。かなり大きい丸かぶでした。
スタッフの「弘岡かぶ」を見て、村田さんがぬいてきてくださったのは、形がちょっと違う「弘岡かぶ」。
やや扁平なもの(左)と、先のとがったもの(右)。村田さんは、先のとがっているほうが本来の姿に近いのではないか、とおっしゃっていました。今回、[野菜の学校]に届いた「弘岡かぶ」も、こちらに似た形です。
「弘岡かぶ」については、本やネットにいくつかの情報がありました。
▽青葉高先生の著書『野菜』(法政大学出版会)
弘岡カブ 高知県吾川郡弘岡地方で栽培されていた在来種から、明治10年頃改良し育成されたカブである。天王寺カブに似た和種系品種で、おそらく天王寺カブの系統であろう。
弘岡カブの来歴は、元高知県園芸試験場長の金澤氏によると「土佐市高岡より導入されたトラカブが、その後の改良と指導者の努力によって生産が拡大し、生産地であった春野町弘岡下を中心とした販売戦略上の商品名として、弘岡カブの名称が用いられたものと推察される。その商品名がその後一人歩きを始め、品種名として定着し、全国に知られるようになったものであろう」(くらしと農業・第6巻1号)
起源は天王寺かぶ説、聖護院かぶ説などいろいろある。明治年間に土佐市高岡の高橋虎次氏が「トラカブ」と呼ばれる系統を選抜し、この系統が大正初期春野町弘岡に入り、選抜と自家採種が重ねられて今日に至っている 。
昔から自家採種されてきた作物が、家によって異なる形質をもっていくのは、自然なことでしょう。いま、「弘岡かぶ」とはこういうもの、と定義し、あてはまらないものは「弘岡かぶ」ではない、とすることはほとんど不可能です。
「弘岡かぶ」について異論のなさそうなことをまとめると
- 春野町弘岡地区を中心に、明治時代から栽培されている和種系の品種。
- 直径20㎝、重さ1㎏にもなる。
- 漬けものに適しているのは晩生の弘岡かぶで、色が白くきめ細かな肉質が特徴。霜が降りる12月~2月頃がおいしくなる。
- 農家による自家採種が行われており、利用目的などによって独自の系統を選抜・維持しているため、早晩性や根形・肉質等で違いがある。
- 昔は多くの農家が正月用の食材として栽培していた。
- 現在はほとんどが地元の食品会社におさめられて、甘酢漬けなど漬けものに使われている。
そう遠くないうちに遺伝子の解析などから、いろいろわかってくることがあると思います。それにしても、土佐市の高橋虎次氏が選抜した「トラカブ」ってどんなかぶなんだろう。
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