野菜の学校(6) 伊勢いも
■伊勢いも
- 江戸時代中頃、享保4年(1719)の文献に「山の芋」という記述が残されており、300年ほど前にはこの地で栽培されていたと考えられている。
- 北畠家の過信によって大和の国(奈良県)よりタネいもが持ち込まれた、とも、紀州藩が「大和芋」を持ち込んだともいわれる。
- 「伊勢いも」は、明治初期には「津田いも」、1884年(明治17年)に「松阪いも」と改称、1900年 (明治33年)に現在の「伊勢いも」と名付けられた。
- 1901年よりアメリカ、香港などにも輸出されていたが、線虫の防疫上、1918年に禁止された。
■ヤマイモ
<プロフィール>
- ヤマノイモ科ヤマノイモ属。つる性の多年草。
- 一般的に「やまいも」、「やまのいも」などと呼ばれ、日本各地で改良されて、栽培された結果、同じ種類のいもであっても、栽培場所が違えば名前が異なったり、違う種類のいもでも名前は同じだったりと、分類するのが難しい。「つくねいも」と呼ばれるものが、実際には「大薯(だいじょ)」であったり、「自然薯(じねんじょ)」のことを「やまのいも」と呼んだり、地方によっても呼び方が異なることもあり、混乱しやすい。
- 食品成分表ではやまのいも類を「自然薯」、「大薯」、「ながいも」に分類し、「ながいも」の仲間に「いちょういも」、「ながいも」、「やまといも」が含まれる。他にもヤマノイモ属にヤマノイモ種:ジネンジョ、ダイジョ種:ヤム、ナガイモ種があり、ナガイモ種の中にナガイモ群、イチョウイモ群(イチョウイモ、ヒライモなど)、ツクネイモ群(ヤマトイモ、イセイモ、タンバイモ)に分けているものもある。
- 自然薯以外、一般的に売られているのは外国から導入された栽培種が多い。原産地は中国華南西部(雲南地方)で、いもの形によって円筒形のナガイモ群、偏平で扇型のイチョウ芋群、球形のヤマトイモ群に分けられる。
<栄養・効能>
- エネルギー123kcal、タンパク質4.5g、カリウム、亜鉛などを多く含む。「やまといも」は「ながいも」に比べると倍のエネルギーがある。
- でんぷん消化酵素のジアスターゼを含むため、消化促進、疲労回復によい。
<基本調理法・料理例>
- 皮をむき、すりおろして粘りを利用した料理にすることが多い。
- やまいもを調理する時、直接肌に触れるとかゆくなる場合があるが、これは皮付近に多く存在しているシュウ酸カルシウムの針状の結晶が壊されて拡散し、手や口など肌に刺さってかゆみが発生するため。シュウ酸カルシウムは酸に弱いので、あらかじめいもを酢水につけて料理すると、かゆみが少なくなるといわれている。ただ、酢水につけると食感がかたくなる。
- また、皮の一部を残して持つ場所を作ったり、手袋やポリ袋を手にして皮をむくなど、直接さわらない工夫をするとよい。
- 伊勢いもは粘りが強く、膨張力をもち、つなぎとしてもよい材料。とろろ汁、薯蕷(じょうよ)饅頭などの和菓子の材料として使われる。1643年に発行されたレシピ本にはやまいものすりおろしに鯛のすり身、卵白、とうふを混ぜて蒸した「伊勢豆腐」の記載がある。このほか、やまかけ、麦とろ、揚げとろ、みそ味のおとし汁などがあげられているという。
- 現在では、伊勢いもはんぺん、薯蕷饅頭、とろろめん、、焼酎などが開発されている。
多気営農センターでは、貴重な資料を見せていただきました。
▼伊勢いもの歴史年表
この1ページだけでも、「ヤマノイモ」と呼ばれていたイモが、次第に販路を広げ、全国に知られるようになっていったことがわかります。
- 年代不明:坂内の農夫ヤマノイモを蒲生氏郷に献上したと伝えられる。
- 享保4(1717)年:ヤマノイモ一貫匁(約4kg)5文で買ったと記録している。-牧 村田藤吉
- 寛政・文化:熱心な栽培家出る。森本弁蔵・森本新助
- 文化8(1825)年:江戸期にヤマノイモを栽培した記録「萬覚帳」が見つかる。-平谷 中井知一
- 年代不明:松阪市、伊勢市に販路を広げる。
- 明治14(1881)年:内国博覧会に出品する。-五桂 佐田善次郎
- 明治18(1885)年:内国博覧会に出品する。-井内林 野田善兵衛
- 明治30(1887)年:松阪大口港より名古屋市へ出荷する。
- 明治33(1900)年:津田村より名古屋市へ直接出荷する。
山口 安太郎著 1982(昭和57)年に出版
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