土佐によみがえる「牧野野菜」
今回の講師は牧野野菜の採種・栽培に取り組む“Team Makino”代表、熊澤秀治さんです。
熊澤さんのお話で、特に印象的だったことが3つあります。
- 味
「めちゃくちゃうまいんですよ、これが」「食べてビックリした。こんなうまい野菜があるのか」「すごくおいしい」「やたらうまい」「超うまい」…。熊澤さんの1時間超のお話のなかに「うまい」「おいしい」ということばが何回出てきたか。
初めて潮江菜を食べたときの驚き。そして、「どうやら在来種はうまくないからなくなったんじゃないぞ」と思い、牧野野菜の採種・栽培に力が入るのは、おいしいから。味が重要なポイント、と考えておられることがよくわかりました。
- ノスタルジー
熊澤さんは、伝統野菜や在来野菜を、「珍しい、懐かしいというノスタルジーでとらえるのは間違い」と言います。そのわけは、「おそらく何百年にわたって日本人が選抜してきた大切な農産物。だからおいしい。だから薬効成分がいっぱいある。私の思いは、先人たちが長い間、一所懸命いいものを残そうとしてきたものをないがしろにできない、たいせつにしたいということ。ノスタルジーなんて失礼…」。なるほど。
お話を聞きながら、なぜ私は伝統野菜、在来野菜に惹かれるのだろう、と思いました。作物としての価値もあるのかもしれませんが、むしろいま自分が手にしている野菜がずーっと昔につながっていること、そしてそこにはたくさんの人とその生活が関わってきたこと。そうした人たちへの畏敬や、思いへの共感、未知への好奇心もある…。ノスタルジーともいえそうですが、ちょっと違うような気がします。
- プロフェッショナル
「よく土地が変わると同じ作物ができないというが、これをどう思うか」という質問への熊澤さんの答は、「その作物にとって最適の環境を作るのがプロの農家です。土地が変わってもそれは変わらない…」。おお! 誇り高きプロフェッショナルのことば!!
ただ、たとえば「潮江菜」には「土佐の雑煮」という宮尾登美子さんのエッセーにまつわる物語があり、その潮江菜がほかでもない土佐で作られているということが、在来野菜としての価値につながっているのは間違いないと思います。
熊澤さんのお話に、セミナーに参加してくださったみなさんから、大きな拍手がおくられたことはいうまでもありません。
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