八百善江戸東京ツアー 向島編・続
「大江戸味ごよみ2019」に登場する江戸の料亭「八百善」ゆかりの土地を、歴史に詳しい方たちのお話をうかがいながら歩く「八百善江戸東京ツアー」の向島編。ランチをいただき、全員集合したら、まず「多門寺」へ。その続きです。▲隅田川神社の梅が咲いていました。
▼梅若公園
梅若公園には、梅若伝説とはまったく関係なく、榎本武揚像が建っています。以前、ここには「梅若塚」がありました。で、「梅若公園」という名がつけられたのですが、「梅若塚」は移設され、ここにはありません。その原因は、後ろに見える建物の建設。これは、端から端までの長さ1.2kmにも及ぶ防災のための建造物、白鬚防災団地です。震災時の火災をストップさせる防火壁として建てられたそうです。
梅若丸の伝説と、かつてここにあった梅若塚について紹介されています。「尋ね来て 問わば応えよ 都鳥 隅田川原の 露と消えぬと」という和歌と、これを詠んだとされる梅若丸の物語。塚は梅若丸のお墓だそうです。母は梅若丸を探して東へ下り、子が亡くなったことを知って、嘆きの余り池に身を投げてしまう…。その母のお墓は、総泉寺にあるといいます。
梅若丸は伝説上の人物で、能「隅田川」で知られるようになります。世阿弥の長男、観世元雅の作です。能「隅田川」では、「伊勢物語」の有名な和歌が地唄でうたわれます。
「名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」
平安時代から歌枕として詠まれてきた隅田川。今の景色からは想像もつきませんが、人の心を強く動かす何かがあったのでしょう。梅若公園では、木の手入れが行われていました。
白鬚防災団地のゲート。いざというときは、火も水もシャットアウトします。その名も「梅若門」。
木母寺は、梅若塚を築いた天台宗の高僧、忠円が塚の傍らに建てた念仏堂、墨田院梅若寺がはじまりといいます。梅という字を分解して「木母寺」になりました。能「隅田川」にはじまった「隅田川物」と呼ばれる、梅若伝説をもとにした一連の歌舞伎演目や浄瑠璃、謡曲、オペラなど。役者たちは、上演する際に興業の成功を祈ってお詣りし、芸道上達を祈願するお寺になったといいます。梅若丸が実在の人物かどうかは問われず、,梅若丸のお墓とそれを守る木母寺は実在する…。4月15日は「梅若忌」で、春の季語になっています。この日、木母寺では法要が行われ、能「隅田川」が奉納されるそうです。現実と物語が交錯している不思議な空間を歩いている気分でした。
▼隅田川神社
源頼朝が暴風雨に遭い、この神社に祈願したと伝えられていますが、いつ鎮座されたかなど詳しいことは不明。隅田川の守り神「水神さん」として、船頭や荷船仲間など川で働く人たちに広く信仰されていた神さまです。
▼白鬚橋
この橋は、もとは渡船場でした。伊勢物語で「名にし負はば いざ言問はむ…」が詠まれたのがこの渡しだそうです。
隅田川は、歌枕や伊勢物語、能、歌舞伎の「隅田川物」ばかりではなく、その後も永井荷風、芥川竜之介、泉鏡花、川端康成…と、この川を舞台にした文芸作品は続きます。隅田川という音の響きには、何か特別なものがあります。
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