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2019年10月 1日 (火)

大江戸味ごよみ 10月1日(火)練馬大根と綱吉と脚気

筑摩書房刊の日めくりカレンダー『大江戸味ごよみ2019』に、伝統野菜プロジェクトとして書いたコラム。10月1日(火)のテーマは、練馬大根と綱吉です。

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江戸で暮らすとかかるので「江戸わずらい」といわれた脚気。その原因は、白米中心、野菜不足の食生活だった。五代将軍綱吉も若い頃に患い、練馬で養生した。綱吉が取りよせた尾張の種から、練馬は大根の名産地になっていく。練馬の農民は、江戸の朝市に間に合わせるため、午前一時頃に収穫した大根を馬にのせ、6~7時間かけて運んだという。

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綱吉の「江戸わずらい」から始まる練馬だいこんの誕生物語、真偽のほどは定かではありませんが、「江戸わずらい」つまり脚気という病いは、戦前まで珍しくなかったといいます。
脚気は、いまは白米を主食にしたビタミンB1欠乏症とわかっていますが、長い間、原因不明で、となえられた原因には、病原菌説、中毒説、白米原因説などなど。患者数がもっとも多かったころには、年間で2万5千人もの人が亡くなっており、「亡国病」と恐れられていたといいます。なかでも高い比率で発生したのが軍隊、特に外地に派遣された軍隊でした。
これに関する陸軍と海軍の対応ははっきり違いました。陸軍がとったのは細菌説。軍医総監森林太郎(森鴎外)は12歳で東大医学部に入学した超秀才でした。彼は脚気病原因発見の論文を発表した東大教授らとともに、病原菌説を唱えました。
一方海軍の軍医は、イギリス留学を経験した高木兼寛。脚気が欧米には見られないことから食との関係を疑い、パン食や麦食などの比較実験から脚気が発生しない食を提唱しました。
脚気病原菌説を通した陸軍では、日清戦争(明治27~28年)で脚気にかかった兵士は4万人超、病死者は4千人以上(死亡率10%)で戦死者の数より多かったのです。

明治43年、鈴木梅太郎が米糠のなかに脚気に効く成分(オリザニン)を発見。病気の原因はビタミンB1不足ということが決定的に解明されました。ところが、陸軍がやっと公的に認めたのは、鴎外の死後2年経過した大正13年といいます。こんなことは、もうたくさん!と思いますが、いまも状況はたいして変わりません。何が大事か、兵士の命なのか、それともエライ人たちのメンツなのか…。価値観が違うといってしまえばそれまでなのですけれど。

ところで、最近脚気が復活しつつあるそうです。原因はもちろん栄養の偏り。バランスがとれた食生活ってなかなかむずかしい。そこで、いろんな色の食材を食べようとか、「まごはやさしい」とか、コマの形のバランスガイドとか、昔は30品目をとろうとか…。30品目を守るとカロリー過多になる、という話もあります。でも案外、そのほうがわかりやすいかもしれません。

 

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