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2020年4月30日 (木)

「さつま菜」、あらため「細尾菜」

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「ステイホームしましょう」の日々、晴れた朝の日課となった散歩をしていると、思いがけない方からの電話着信記録に気づきました。折り返したところ「さつま菜が採れたから送るよ」とおっしゃいます。翌日届いた箱には、みごとなシイタケの大小、その下に緑色の葉がつまっていました。栃木県日光市でわずかに作られているアブラナ科の野菜「さつま菜」です。

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「さつま菜」のことを初めて知ったのは、昨年5月のこと。栃木の勉強仲間からのメールでした。非常に味がよくて「かき菜」に似た、とても貴重な伝統野菜がある、といいます。ご高齢の生産者さんは「栽培できるのはあと5年くらい」とおっしゃっているらしく、急がないと消滅してしまいそう、と心配していました。
当時、私たち伝統野菜プロジェクトはセミナー「のらぼう菜と仲間たち」を開く計画を立てていましたので、これまで知られていなかった「仲間たち」として紹介できないかしらと思い、生産者のSさんにご連絡させてもらいました。

セミナーで紹介するには、収穫時期が開催日、3月7日と合わなければなりません。ところが、「さつま菜」ができるのは4月下旬から5月上旬! ほんとうに残念でした。結局セミナーも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催を断念せざるをえなかったのですが…。そのときの電話で、「できたら送るから食べてみて」とおっしゃっていた、その「さつま菜」がやってきたのです。200422_7363_20200504190301

▼荷物の上にのっていた生産者さんのメモ
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貴重な「さつま菜」を私一人で味わうのはもったいないし、Sさんから「収穫した翌日のほうがおいしい」と聞き、さっそく仲間たちに送りました。収穫の翌々日なので「すぐ食べて」というメッセージつき。2、3日後、感想が届きました。

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一人はみそ汁の具、一人はゆでておひたしとしょうゆ+マヨネーズ(Sさんおすすめ)、私はおひたしでいただきました。

ゆで時間は、水にとった人は1分半くらいとのこと。私は、やわらかくてアクもなさそうなので、おかあげにしました。熱湯に入れるとみるみるうちに太い茎が透き通ってきます。あわててざるにとりました。再沸騰してから1分足らずだと思います。

食べると、アブラナ科の春の葉野菜らしいほんのりとした香りと苦みがありますが、「のらぼう菜」に比べ、上品で繊細な味わい。食感も味もやわらかく、多くの人に好まれそうです。

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生産者のSさんに感想をお伝えし、「さつま菜」の由来などをうかがいました。以下はお話のまとめです。

  • 「さつま菜」という名前の由来はわからないが、93歳になる土地の古老によると、明治時代以前から細尾地区で栽培されてきた
  • 細尾地区の鎮守さまは1250年前のもの。古くからの歴史がある地域の野菜
  • 「さつま菜」のタネを、細尾地区から隣の地区に嫁ぐ娘に持たせたところ、同じ味の野菜にはならなかった
  • 「さつま菜」の栽培面積はSさんが300平方メートル、地域全体では600平方メートル
  • みんな自家用に作っている。売る気はない、採算が合わない
  • タネは自分で採っている。自家採種を繰り返したことと、アブラナ科の交雑しやさすさから、劣化してしまったので、何年か前に保存してあったタネを播きもどした。以後、「二番ぶき」の中の優秀なものからタネを採っている
  • 地域おこし協力隊の方のアドバイスもあり、今年から「細尾菜」に改名

日光といえば、「日光を見ずして結構と言うなかれ」ということわざがあり、日光東照宮のすばらしさを称えたもの、と解説されます。東照宮は德川家康を祀った神社ですから、江戸時代、忖度に長けた人たちが言い出したフレーズでしょう。
しかし、「細尾菜」という名前の由来である日光市細尾地区の歴史は、江戸時代どころではありません。地域の鎮守さまは1250年前からある(聞き違いではないと思います)のだそうです。今から1250年前、というと西暦770年、奈良時代です。
そんな地域で、正確にはわからないけれど、明治時代以前から作られてきたという由緒ある青菜、改名したことですし、失われるようなことにならないように、願うばかりです。

Sさんは、「食べて喜んでもらいたい」「おいしかったと言われるのがなにより嬉しい」とおっしゃいます。でも、「細尾菜」が伝統野菜として多くの人に知られ、みんなの手に入りやすくなることは、お望みではないようです。販売するには、おいしい野菜をつくっているだけでは十分ではありません。魅力のある名前だけでなく、収穫量も必要ですし、販売のための煩雑なあれこれも求めらます。
「さつま菜」のような、その土地だけの知られざる野菜は、全国にまだ残っているのではないでしょうか。生産者さんに無理のないように、地域の伝統野菜として伝えていくにはどうすればいいのでしょう。

 

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