伊吹大根の「ぜいたく煮」
たくあんの煮ものは、各地に郷土料理として残っています。ネットによると、京都「たくあんの炊いたん・大名煮」、福井県「たくあんの煮たの」、石川県「おくもじ」、富山県「いりこぐ・いりごき」などなど。漬けものがある土地なら、自然につくる料理でしょう。
■その他の漬けもの料理
煮ものにするのはたくあんだけではありません。[野菜の学校]で飛騨野菜の講師をしてくださった方からうかがったのは、赤かぶの漬けものを煮た「煮たくもじ」。「くもじ」は漬けもののことをいい、「煮たくもじ」で「煮た漬けもの」を指すという、シンプルなネーミング。また、長岡野菜の講師から教えていただいたのは「煮菜(にな・にいな)」という料理で、「長岡菜」の塩漬けを使うのだそうです。
紹介してくださったお二人とも、郷土料理自慢というより「この素朴な味、わかるかなぁ」という感じでした。
■「くもじ」というコトバ
石川県の「おくもじ」や高山の「煮たくもじ」の「くもじ」は「く」+「もじ」で、もとは「茎」+「文字」。語尾に「文字-もじ」をつける「文字コトバ」の一つです。「くもじ」の意味は「茎の漬けもの」、さらに「野菜の漬けもの」というのですから、知らないひとにはわかりません。
「文字コトバ」の始まりは、室町時代初期頃から宮中や院に仕える女房たちの「女房コトバ」だそうです。同じ文化を共有する仲間内だけのコトバでコミュニケートするって、のけ者にされるほうはいい感じはしませんし、私はなんか幼稚な感じがします。でも、文字コトバはたくさんあり、たとえば「しゃもじ(杓子)」のように、いまもふつうに使われるコトバに残っています。
■漬けものを使う料理
まず韓国のキムチを使った使う料理は、私でもいくつも思いつきます。キムチチゲ、キムチジョン、豚キムチ炒め、キムチチャーハン、キムチ納豆、キムチ豆腐…などなど。
中国のザーサイになると、漬けものというより、料理に独特の風味をつける食材。台湾や中国の、白菜の古漬けを使う酸菜白肉鍋も美味です。ドイツにはキャベツのザウエルクラウトがあります。思いつくのはソーセージの付け合わせくらいですが、きっと本場ではもっといろいろに使われるのでしょう。
古漬けを使う料理は、発酵した酸味とうまみが作り出す複雑な味わいがあります。▲写真は中国料理「発酵白菜土鍋」
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